後出しジャンケンのようで気が引けるのだが、思い出されるのは2008、2009年のLA国際自動車ショー開催時に行われるグリーンカーオブイヤー(G-COTY)である。
前年の2007は、時のアーノルド・シュワルツェネッガー カリフォルニア州知事列席の下表彰式が行われ、いかにものシボレー・タホ ハイブリッドが栄冠に輝いた。
その翌年は、VWが捲土重来を賭ける勢いでTDIを猛プッシュし、ゴルフセダンとも言うべきジェッタTDIがG-COTY。当時ディーゼル乗用車不毛の地と言われた米国の自動車州で、V Wの本気を感じ取ったことを覚えている。
2008年と言えば、前年の2月にEU委員会が120g/kmのCO2排出規制法案を突如提出し、欧州の自動車産業の空気を一変させた翌年。それまで「我々にはディーゼルがある」とハイブリッドを初めとする電動化技術に消極的だったドイツメーカーがことの重大さを悟り、IAAフランクフルトショー2007に雨後の筍の如くハイブリッドやEVの技術展示を行った。
現在でもVWの米国におけるシェアは6%(約60万台)に留まり、桁が一つ違うトヨタ/ホンダとは大差の開きがあるが、当時は30年以上前のラビット(ゴルフ)による進出の失敗の影響が残り゛さらにシェアは小さかった。
そこでテコ入れ策としてTDIでエコイメージを訴求して、グリーンカーに注目が集まるカリフォルニア州でイメージ挽回を図った。ヴィンターコルン体制2年目、振り返ると驚異的と評価される躍進が始まった頃である。
2009年はトヨタの秘蔵っ子であり、アメリカで成功を収めていた元祖ハイブリッドプリウスの3代目デビューの年。G-COTYの大本命と目されていたが、蓋を開けると2年連続となるVWグループのAUDI A3 TDIが栄誉を手に入れた。
ディーゼルに関心が薄いはずのカリフォルニアで、プリウスを退けての連続受賞にはさすがに違和感を覚えたが、COTYに企業努力はつきもの。洋の東西を問わず、人が決めるプライズとはそういうものだろう。
僕はCOTYを否定する者ではなく、それらを含めて人間が選ぶ祭事に似たイベントであり、そこにこそヒューマンな面白みがあると考えている。
これが厳格さを求められる品評会や技術コンテストとなれば話は別で、採点評価には確たる理由が必要だ。それはZEV法が定める排ガス規制で求められる技術的ファクトに対する要求と何ら変わるところはない。
COTY(年グルマ選び)のようなプライズに極端な厳格さを求めることには違和感を覚える一方で、法が定める規制については情実の入り込む余地は認められない。
明らかに不正となるDfeat deviceを使用していた時点で、VWは完全にアウトであり、それは一部の担当者レベルの話ではなく技術系のマネージメントが不承知だったとは考えにくい。
今回がそうだったように、しかるべき方法で調べれば露顕するファクトの話。1100万台が該当するという事実からも組織的に行われた不正とみるのが妥当だろう。
それが明らかになったからこその事件であり、違反の事実に擁護の余地はない。功を焦ったような急成長には必ず綻びが生じるものだ。
1000万台という世界生産規模は鬼門。かつてGMはその数字を得て世界一を印象づけた後に破綻に追い込まれたし、トヨタもサブプライムローン/リーマンショックによる世界恐慌状況という外部要因に始まったとはいえ急成長の結果として創業以来の危機を迎えた。
同様な視点から、ブランドを買い漁るようにしながら急成長を遂げるVWもいずれ躓くとみていたが、思わぬタイミングと理由でその時が訪れた。
トヨタが抱えるリスクは今も変わらないと思うが、VWは技術誤用という内部要因による躓きだけにブランド毀損によるダメージは計り知れない。
問題露顕のタイミングがタイミングだけに様々な憶測が溢れそうだが、歴史的転換点になることは間違いなさそうだ。
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