時間軸で近いところから次第に過去に遡って行く。倒叙法という文章スタイルがあると何かで読んだことがあるが、ドライバーのトヨタ86開発陣に訊く連載はスケジュールやら相手方の都合やらで、こちらの思いとは違う展開で取材が進んだ。
愚痴っているわけではなく、変則的だったからこそインタビューする側にいい意味での緊張感が生まれ、聞き手としても刺激が多く面白かった。まず最初に富士スピードウェイでN1仕様のテストをしているから、というスケジュールに合わせて商品企画と開発テストドライバーの話を聞いた。
その模様を転載するのは少し後回しにして、昨日のエンジン編と同じ日に愛知県豊田市の本社を訪ねて聞いたトランスミッション(T/M)開発者の回をご覧に入れる。普通エンジンが先でT/Mはそれを受けて…ということになるのだが、今回は何故か逆。それはそれで面白かったので、お楽しみ頂きたい。
T O Y O T A 86誕 生 秘 話 (driver2012年4月号)
前回は製品企画の立場からトヨタ86とは何か? にアプローチし、現代のトップガンとともにFRの走りという大命題に迫った。第二回は、21世紀に身近なFRスポーツを再生させる決定的な要素となったドライブトレイン、なかでも黒子とみなされがちなトランスミッションにスポットライトを当てることにする。
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ところは富士スピードウェイから愛知県豊田市トヨタ町一番地のトヨタ本社事務本館。約束の時間に赴くと現れたのは3名! いずれも第2技術開発本部所属で、石川友啓さんと伊藤光春さんがMTの第1ドライブトレーン技術部、高波陽二さんがATの第2ドライブトレーン技術部であるという。MTから2名というところに、86のスタンスというかコンセプトが垣間見れる。専門分野が細分化され、それぞれにエキスパートが存在する。日本の自動車産業の強みだが、いっぽうで縦割りの弊害もありそうだ。
それはともかく、トランスミッション(T/M)は取っ掛かりが難しい。最初にエンジンの話を聞いて、それを受ける形でT/Mかな? 描いていた想定は端緒から崩れた。
86は、単なる寄せ集め?
T/Mは受け身。内燃機の場合、変速と減速は必然だからエンジンを活かす存在として重要だが、T/Mから主体的に発想するってことはあるのだろうか? 苦し紛れに、まずそこから切り出してみた。
「ギヤリングをこうしたい、エンジンのトルク特性をこんな風にできないか、というやりとりはあります。MTはエンジンの美味しいところをどうやってギヤリングするか、シフト時にどう加速するか。エンジンをいかに動かすかについてはエンジン部門と密にやってます」
まずは実験解析室の石川グループ長が応えた。 それはECU(エンジンコントロールユニット)の話なのか、ギアのステップのことを言っているのだろうか。確認すると、ギア比そのもののことだという。エンジン特性でいうと、駆動力を人が運転して楽しいと感じられるようにする……といった。そこには方程式みたいなものがあるのだろうか?
「目安はありますが、要は人がどう感じるか。それに適合していくものだと思います。いわゆる過渡特性、ギヤを繋いでここからここまでどう加速して行くか。計算で出にくい部分でもありますし……」伊藤さんが引き取ってフォローする。
率直に言って、僕はT/Mのどこから切り込んだらいいか決めかねていた。かつて連載『ナノカセカンド時代の匠たち』でパーツからクルマ全体に迫ろうとしたこともあるが、今回は86という古くて新しいコンセプトのスポーツカー開発の中で、エンジンとT/Mがいかに存在感を得るに至ったか。そのプロセスにスポットを当てようとしている。
かつてT/Mは自動車メーカーの内製が基本だった。それが現在では専門のサプライヤーに任せる構造へと変化しつつあるようだ。でも設計はメーカーが主体的にやる? どうなっているのだろう。
「今回の86に関しては、設計は富士重さんからアイシンAIさんへの発注という形です。我々は出来上がったモノに対して、こうしたほうがいいのでは? といったアドバイスをする。こういう経験を初めてしたのが1991年のスープラ。トヨタのユニットとしてゲトラグ(ドイツのT/Mメーカー)と手を結んだのですが、すでにサプライヤーとして確立したブランドなので構成部品の詳細は出してもらえない。そんな状況でこういうフィーリングにしたい、なんていうやりとりをした。それと同じようなことが、1年間86に携わることで再現された。図面を見て実際の落としどころまでは決められないんですが、そこで富士重さんとかアイシンAIさんにアドバイスという形で……」
伊藤さんが話終わる前に、事情が呑み込めない苛立ちもあって尋ねた。いや、まったく分からない。だってクルマを企画して設計する。その際のユニット、パワートレインとかは単なる寄せ集めということになる?
「これはいい質問ですね」とここで割って入ったのが多田哲哉チーフエンジニア(CE)である。
86で見るクルマ造りの変化
今月の日経ビジネスご覧になりました? 唐突な質問に編集担当と顔を見合わせていると、トヨタ特集に『自前主義からの脱却』という項があって、86をテーマにした記事が書かれた。そこには最近のトヨタから発せられる様々なメッセージが紹介されたという。
「エンジンの自前は当然。基幹部品をいかに社内で育てていくか、それが勝負どころと考える時代がずう~っと続いていました。でも、時代は大きく変わっているんですね。世界的にみるとサプライヤーのレベルはもの凄く上っている。自前にこだわって内部でうだうだやっていたら、それこそアッセンブリーとして面白いクルマが出てこない。もう何年も前からそうなっていて、クルマの商品企画も方向転換しているんです」
86は、そうした流れの中で最初の企画になった。その経緯を話したら面白いということで、前述の特集記事が出来上がったというのである。
「脱自前主義をやろうとすると、深くデータを知り合わないと難しいことが出てくる。互いに乗り越えるためには、当然コミュニケーションが欠かせない。その一環としてスバルと一緒にスポーツカーを作るという前代未聞のプロジェクトを始めた。それが86の真相でもあるんです」
何だって? 86はトヨタのクルマ作り大改革のパイロットモデルだというのである。思いも寄らない展開に、ちょっと頭が混乱した。
「エンジンもそうですが、T/Mはもっと状況は難しい。トヨタが蓄積した基本的な技術を背景に生まれたサプライヤーとしてのアイシンAI(MT)、アイシンAW(AT)があり、今ではそこにスバルを担当する部署もある。三者をコントロールしながらモノ作りをしなければならなくて、正直面倒臭いというか、自前でやったほうがよっぽど簡単です。なかなかデリケートな話なので、ここは乗り越えながら作った背景を上手に抽出していただかないと……」
僕自身、大枠の認識としてこう捉えている。すでに欧州(とくにドイツ)ではサプライヤーが非常に力をつけていて、ほとんどの自動車メーカーで自社開発の比率が下がっている。国産各社はそれを追う途上にあると聞いた覚えもある。しかし現実はもっと深刻で、日本は先進国としては異様に内製率が高く、実はそれが明らかに足を引っ張っている……多田CEは断言するのだった。
「我々商品企画の立場から見ると、時代は間違いなく脱自前になった。その典型がスマートフォンですね。こんなモノが作りたいという着想がすべてで、問われるのは、世界中で最適の部品はどれ?とか一番早く作れるのはどこ? それがアッセンブリー商品の現実です。iPhoneが台湾製だとか言う人は一人もいないし、それで商品性が下がったりするわけでもない。時代は完全にそっちなんですが、日本は自前だなんだと言い過ぎて商品力が……」
落ちてきている。なるほどたしかにそうだ。実際、僕も心臓部のエンジンは自前じゃないと個性が揺らぐと考え、86のスバル・フラット4採用には疑義を抱いていた一人だ。
正直言ってトヨタ内部でも意識が変わり切っていない。だから、豊田章男社長は”BMWからディーゼルエンジンを買う”ことを電光石火で決めた。あれは社内向けのメッセージでもあったのだと、多田CEは解説する。
ここまで話を聞いて3つ閃いた。まず必要なのは『言葉』だということ。自動車メーカー、サプライヤー、そしてその各部署……これまで同じ日本語だけど意味や解釈が異なった言葉使いを、相互に理解できるようにすり合わせる。『オリジナル』はどう使うかが重要で、自前かどうかはどうでもいい。
そしてなによりも必要なのが『コミュニケーション』だ。スティーブ・ジョブスの優秀さは、エンジニアとしてではなく、何をどう持ってきてアレンジするという、コミュニケーション能力の高さと着想力によって光り輝いた。
「まさにクルマもそういう時代に入った。環境技術は別ですが、極端に進んだメーカーやサプライヤーがあるわけではなく、基本技術には差もない。どこにどんな技術があるか、何を組み合わせると面白いモノになるか。完全にコミュニケーション能力の勝負ですが、そこで日本は一歩遅れを取っているということです」
結局、オールニューとなった
なにやら話が巨大になってきた。話をシンプルかつクリアにするために、『オリジナル』を確認しよう。MTもATもベースがあると聞いている。MTはアルテッツァのアイシンAI製6速のアレンジでしょう?
「当初の企画段階ではそれを使おうと。それで進められたんですが、やっていく内にこれじゃいかん…となった。変えないと良いクルマにできないという我々の提案も含めて理解いただいた。なのでアルテッツァのモノが残っているかというと……」と伊藤さんの歯切れはもうひとつ。「いわゆる骨格部分は同じですが、ほとんど丸新です。8割がた部品は新しくなっています」石川さんがすかさずフォローした。
それならベースはアルテッツァ用とか言わないほうがいい。さらに突っ込みむと、多田CEが即応した。
「それは我々商品企画の問題です。今回のクルマ、最終的にプラットフォームはFR専用を造ると決めた。エンジンは既存のフラット4をそのまま使うと。でも、どうやっても性能が出ない。そこでスバルとトヨタのエンジニアが集まりオールニューエンジンを作った。アルテッツァ用T/Mについては『う~ん』という感もありましたが、ミッションまでオールニューなんて、当初は考えもしなかった。ところが、直して使ってみたらこれが全然駄目。”なんとかしてよ……”ということで、こうなった。新設計と言っても構わないんですが、トヨタは真面目なので。オリジナルが何かと問われれば、アルテッツァ用を変えたと答える。そういうことです」
既存のコンポーネントを調達してアレンジしたという物言いがそもそもの誤解の元になっていた。話が全面的に覆ったような気分を味わいながら、高波さん、ATのベースは何ですか? 話を切り換えてみた。「縦置き6速は2.5~3ℓに対応するマークX用があります。その制御はトヨタで開発して、スポーツシフトをアドオンして……」
当初の企画段階では上手く調達して、ポンと作っちゃおう、と?
トヨタに限らず、そう言わないとクルマとして前に進まない。新しくして性能出なかったら原価の面倒は見ないぞと経営陣に言われるだけ、と多田CEはすかさず反応した。
それは分かるが、要するにMTはアイシンAIのアルテッツァ用J160がオリジナルで、それを使うことを前提にスバルの開発陣に提案した。その設計の段階でトヨタは何をやったということになるのだろう?
「シフトレバーだけを少し短くして、シャフト、ギヤ、ベアリング関係は流用して味付けできないか。まずそこから始まったんですが、操作感、フィーリング面でこのクルマに合わない。走りの味付けのスペシャリスト大阪(前回登場)や多田CEがテストして言うわけです」
伊藤さんの述懐に、でもその際に何を『良し』とするか評価軸をあらかじめ言葉で決めておかないと、どっちにでも行っちゃう。そう質すと多田CEは「もちろん決めました」目標には簡単に到達したが、乗ると駄目。少しずつ改良して行ったら85%ぐらい変わってしまったという。 ATの構成部品はマークXとまったく一緒なんですね?
「油圧をどう流すとか、電子制御に関わるチューニングスペック以外は基本的に型式名A960のスーパーインテリジェント6ECTですね」
当初の企画段階でMT、AT両方ないと成立しないという考え方はあったのだろうか?
「MTだけにしようと思ってました。しかしアメリカである程度売れないと商品企画にならない。正直しょうがないと思い、他部署にDSGの可能性を相談に行ったら『こんなクルマのために作れません』」多田CEはあっけらかんと言う。
高波さんの部署では当然比較検討はするんでしょうけど、今のところトヨタにはトルコンATとCVTしかない。2クラッチのDCT、本当はやりたかったのでは?
「素性から考えればまったく問題がない。スムーズさと応答性、コンパクトさと重量、トータルパフォーマンスではATのほうがいいんです」。
一瞬ただの強がりに聞こえたが、いやいや間違いなくDCTを超えたと思ってますから、と多田CEも真顔で同調した。86用ATでもっとも意識したのは重量で、トルコンATはDCTより軽いというのである。
これはメディアの問題でもあるのだが、今までなかったモノ、新しい技術を従来より良いと括る癖がある。欧州メーカーからDCTが出てきた背景には、MTが主流で少数派のトルコンより部品共用が可能な2クラッチのほうが開発、普及しやすいという側面もある。これはFRと他の駆動レイアウトにも関連づけられる視点だろう。
86で、AT限定免許撤廃!?
免許制度と併せて、ここは重要な視点かもしれない。多田CEは、MTを基本に86のコンセプトを考えたというが、時間と費用の両面でATにインセンティブを与えたら、そりゃATに流れる。トヨタは『免許を取ろう!』というキャンペーンを張っているけれど、AT免許取られたら86的には台無しだ。
「実は、免許の違いを廃止しようという活動も同時にやっているんですよ。昔みたいに両方乗れるようにしようと。あれは奥田(碩=ひろし現トヨタ相談役)が社長の時に、どうせATしか乗らないんだからATとMTを分けて簡単にとれる制度を作れと頑張った。これは公になっている話ですね。単に元に戻すというのでは具合が悪いので、新しいクルマ(86)を入れてMT免許のハードルを下げようとしているんです」
AT限定免許が生まれた経緯はそういうことだったのか。ちょっとしたスクープ話だと色めき立ったが、元に戻すのもまたトヨタの使命ということだろう。
余談ながら、僕は単なる懐古趣味やマニアックな視点からではなく、高齢化社会に立ち向かう上での身体論的な立場からもMTへの回帰を提案すべきだと考えている。2ペダルによるイージードライブより、機能的に使える身体(からだ)を活用するファンtoドライブのほうが、資源・環境・安全はもちろん、高齢者のクォリティ・オブ・ライフの視点からも有効だと常々思っている。
そこで、余談ついでに多田CEに人間の能力を引き出す技術開発というのがある。スポーツカーは一番分かりやすい例になるはずだが、たとえばATの自動変速のような感覚で嫌でもシフトしたくなっちゃうMTとか、まだまだ技術開発の余地は残されている。そんな話を振ると……
「任天堂DSの人気アプリとして有名な『脳トレ』がまさにそう。あれはスウェーデンのカロリンスカ大学で学んだ川島隆太さんの作ですが、トヨタにも同大を出て”運転したくなるってどういうことなんだろう”と2年くらい研究開発した男がいる。MTに乗ると明らかに脳が活性するし、老化防止にもなる。ぼ~っとしながら運転できるクルマなんて、交通安全上もっとも良くないんです」
シフトやクラッチワークで左半身を動かし、右脳を使うを使うことになる右ハンドルのMTなんかもっといい! ほとんど省みられない視点だが、これは僕のFR/MT論を補強する論点のひとつでもあるのだ。 その操作感でいうと、シフトレバーの長さ。MTもATもそんなに変えていない。あれの意味するところは何ですか?
「MTはもっと短くしたかったんですよ。最終的に決めるのはチーフエンジニアの権限です。企画段階でいろんな意見を聞いていて、最初はもっと短いやつを考えました。あえてそんなに簡単に入らないようなシフトにしてるんです。見栄みたいなもんでいうと、ですね」
数値やデータよりもフィーリングや官能性を重視したという86チーフエンジニアらしいコメントだ。
「マニュアルである以上、シフトポジションが分からないと不安になるということで、操作の重さとポジション感には非常にこだわってます。横バネやゴムなどによるヒシテリシスをつけながら。プロトタイプのMTに駄目出しがでて、もう1サイクル回させて下さいとお願いしたのが、10年の頭。試作で最終確認ができたのは同年の夏頃でしたね」とはMT技術室の伊藤グループ長である。
クラッチもかなり変わっているものなんだろうか?
MTの場合クラッチペダルとの関係はかなり綿密にやっている、とは多田CEの弁だが「技術的にはクラッチもギヤボックスの中身もそんなに変わりません。世界中には何十種類と同系同タイプのモノはありますが、クルマによって味があるようにそれぞれ違う。それらは数値化で語りきれないもので乗って乗り尽くして、いろんな意見を聞いて形にしていく」実験解析室の石川グループ長の説明はより現実的かつ実践的だ。
世界一の技術なんていらない
「昔の技術を捨てていかないと先に進めない。ともするとそういう話になりがちですが、技術の蓄積は膨大なんですよ。最適な組合せは何だとか、クルマのキャラクターに合わせていかにチューニングしていくかなんて、あまり派手さがない。今まで見たこともないクラッチ構造……なんていうほうが、記事にもしやすいじゃないですか。だから、こういうフィーリングになったのだとかね」
「クルマ作りの企画もそういう方向に行っちゃっていた感がある。この86のコンセプトは、バック・トゥー・ザ・ベーシックなんですよ。世界一の技術なんて一個もいらない。すべて昔に戻れ、と。ハイテク性能なんて要らない。そんな無駄な金遣うんだったら重心1㎜でも下げてみろ!と。そういう考え方はすべての部署に浸透していて、どうしても譲れないエンジンとかトランスミッションにはまさに最先端の技術を使う。カタログやスペックのための技術なんてクソ食らえだ、と」
脱自前主義の話もそうだが、多田CEの86というスポーツカー作りの哲学は一貫して本質の追求に向いている。
ハチロクのT/Mのここがいいぞというところを100字以内で述べよ(笑)と尋ねられたら……?
「簡単にいうと、乗っていてシフトしたくなる。これに尽きます。そのテーマに向かっていったのかな、という感じです」(石川)
ATの場合は? 同じ質問で。
「パドルシフトのブリッピング制御ですね。レーシングカーでも大体そうなっているのですが、普通のお客様でも味わえるフィーリングを作り込めたかな、と」(高波)
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86のステアリングを初めて手にしたのは昨年の秋。取材しませんか?含みある誘いに富士スピードウェイに足を運ぶと、本コースを2時間自由に走っていいという望外の提案。ひょっとして……淡い期待を抱いてヘルメットとスーツ一式をバッグに詰めて持参したら、文字通り棚からボタ餅がドンと落ちてきた。
前代未聞の境遇に胸は高鳴った。テスト車両とのコミュニケーションに全身全霊を傾けよう。心に誓ったのは当然だろう。シートに収まり、小径ステアリングホイールの感触を念入りに確かめ、ドライビングインターフェイスとの折り合いを得たところで、歩くようなリズムで富士のグランプリコースに繰り出した。
まず何よりも掴み取ろうとしたのが、全体から醸し出される雰囲気。身体のすべて、五感を介してもたらされるファーストインプレッションの塊だ。ステアリング、シフト、ABCペダル……身体がクルマと直接情報交換を行う操作系の出来ばえはどうか。あの時身体に刻まれた無形の思いがこの短期集中連載として実を結んだわけである。
次回は、いよいよエンジンに迫まることになる。
順序は逆でもけっこう読めるでしょう? 初回のインタビューは全編「〇×▲……」の鍵カッコ仕立てなので、ちょっと転載は難しいかも。ご要望があれば貼ります。