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2011年5月31日火曜日

感動を追い求めて‥‥

   テクノロジーの進歩は、実際に手にして体験してみないと分からない。11年前に一念発起してホームページ(HP)作成に手を染めたことがありました。既存メディアだけに頼っていたら未来が危うい。20年もフリーランスで生きてくれば、そのくらいの嗅覚は身につきます。

   市販のHP作成ソフトを買い求め、マニュアルと首っ引きで悪戦苦闘。一週間ほど徹夜して出来上がった成果は、お世辞にも褒められない子供だましのようなものでした。なにしろ当時使っていたラップトップはHDDが1GBしかないWindows95マシンです。ブロードバンド前夜のアナログ時代。ピィ~ガァ~というダイヤルアップの接続音が懐かしく思い出されます。

   考えてみれば、高速ブロードバンドが普及してまだ10年たらず。なのにアナログのアクセスポイントへの接続に一喜一憂していた時代が遥か遠い昔のように感じられる。携帯電話の全国的な普及による時代の変化と、昨今のスマートフォンの浸透によってもたらされる社会の質的変容は、まったく別次元の事象ということになりそうです。

   メールができる電話機から、通話も可能な情報端末に。アナログ時代の不便をノスタルジーとして懐かしく振り返らせる圧倒的なスピード感にはなかなかついて行けません。TwitterツイッターもFaceBookも、アカウントを作ったのは早かったのですが、使おうかどうか迷っている間に時代がどぉ~んとそっちに流れて行きました。

   理解できない旧世代との溝はすでに埋めがたいものになっていますが、テクノロジーは構わず前へ前へと急いでいる。ガラパゴス化をいかに克服し、世界標準に足並みを揃えながらサバイバルするか。課題は山積みですが、逆戻りすることはないでしょう。

   ところで‥‥意を決して懐かしいタイトル『動遊倶楽部』を復活させることにしました。錆びつきを自覚する瞬間が増えた石頭どこまでやれるか。半信半疑のままとにかく作成に取りかかったわけです。さすがに右から左へすいすいとは行きませんでしたが、それでも何とか形になりました。

   しかも、驚いたことにかなり高度な内容のブログの作成に掛かった費用は実質的にゼロ。時間は掛かりましたが、ハードもソフトも無料でした。遅ればせながらクリス・アンダーソンのベストセラー『FREE』で語られているフリーミアム(FREEMIUM)経済の進展ぶりに、いまさらながら驚いています。

   フリー=無料を前提とするサイバー空間の現実は、そう遠くない将来経済の仕組みを根底から改めることになるだろうと言われています。自動車産業のような製造業は、裾野の広い生産の現場であると同時に、膨大な物財を購入する消費者としての側面を持っている。グーグルやアマゾンのようなビジネスモデルとは同一には語れません。

   設備や材料を消費することを前提とするために限界費用がゼロに近づくことはなく、いかに付加価値をつけて高く売り利益を上げるか。開発/生産以外のマーケティングや販売でのコストを極限まで引き下げることが、これからのサバイバルの必須条件となる。新興国の価格競争力に対抗するには、圧倒的な品質とブランドをはじめとする感動をもたらす資産価値の創造が欠かせません。

   先週の5月23日、東京のMEGAWEBで行われた記者会見はとても興味深いものでした。その数日前に一通のメールがトヨタ自動車広報部からもたらされました。ヘッダーには「共同記者会見のご案内」とあり、添付ファイルを開くと、米国セールスフォース・ドットコムとトヨタ自動車㈱の代表者による共同会見を行うので出席するように、と書いてあった。

   セールスフォース?初めて聞くドットコム企業名。さっそくgoogleで調べると、1999年にエンタープライズ・クラウドコンピューティング企業として創業したベンチャーで、会長兼CEOのマーク・ベニオフの強いリーダーシップによって”クラウド”のリーディングカンパニーとして急成長を遂げている。

   せっかくの機会なので少し踏み込んであたってみると、クラウド型プラットフォーム「force.com」やクラウド型CRM(顧客関係管理)アプリケーション「salesforce.CRM」、企業内SNSの「salesforce.Chatter」などといった、資料を読み込んでもすぐには理解の及ばない事業内容が記されていた。すでに全世界の97,700社を顧客として抱え、年間推定収益が20億ドルを超える初のクラウド企業となることが確実視されている。

   確かな技術力もさることながら、社会貢献を創業時からの企業方針と定め、就業時間の1%、製品の1%、株式の1%を地域社会に還元する『1/1/1モデル』に則ってセールスフォース・ドットコム基金を設立。独自の理念によって新しい企業のあり方を打ち出しているという。

   注目の記者会見。会場のMEGAWEBに足を運ぶと、意外にも同業の自動車ジャーナリストの影がほとんどなく、少数の専門誌編集者の顔を見ただけ。新聞やWEB系メディアが大半という状況でした。

   同時刻に公式ユーストリームを使ってオンラインライブ中継を行うということで、あえて混み合う会場を避けたということでしょうか。トヨタの広報部としても、自動車専門メディア関係者にはあまり声掛けしなかったということでした。何はともあれ、そのライブ映像をご覧ください。
http://www.ustream.tv/recorded/14906693#utm_campaign=www.facebook.com&utm_source=14906693&utm_medium=social

   記者会見で明らかになったことで印象的だったのは、トヨタとセールスフォース・コムの提携に漕ぎ着けるまでのスピード感。マーク・ベニオフCEOから『TOYOTA FRIEND』のプランが提案されたのは、デトロイトNAIASの往路か帰路に同CEOのハワイの自宅に立ち寄った際という。もちろん、クラウドコンピューティングについてはトヨタとしても独自にリサーチを進めていてたというが、提案を受けた豊田社長はわずか数ヶ月で今回の共同会見を実現させてしまった。

   東日本大震災の2日前の3月9日にグローバルビジョン発表会を行ったかと思うと、翌4月にはマイクロソフトと次世代テレマティクスのプラットフォーム構築に向けた戦略的提携についての基本合意を表明。今回のセールスフォース・コムとの提携によって、マイクロソフトAZUREのプラットフォームに加えてオープンソースプラットフォーム領域におけるクラウド環境構築も視野に収まった。

   書いている本人がよく内容を飲み込めていないのですが、限界費用の面で壁のある製造業にとってもっとも効果的な競争力獲得の手段に決定的な強みが加わった‥‥ということになるのだろうか。それはともかく、私自身の個人的て興味としては、FREE(無料)が基本となるオンラインテクノロジーがどのようにクルマの商品的魅力と噛み合うかにあったわけです。

   具体的には、今年の暮れに登場が予定されるFRスポーツカーFT86でトライされているというデジタル世代を取り込むアイデアとの関係でしたが、残念ながら会見後の質疑応答では指名を得ることが叶いませんでした。

   今回の発表では、"TOYOTA FRIEND"は来年以降登場予定のプリウスPHVやEVへの新たなコミュニケーションツールとして活用されるということでしたが、もちろんデジタル世代に食い込むことを大きな目標に掲げている新世代のスポーツカーに使わない手はありません。

   どのような形でそれが実現するか今のところは不明ですが、これまでにない枠組みでのクルマの魅力を訴求するとFT86の開発首脳から直接聞いています。

   既存のクルマの価値観を超えるデジタルな魅力の創造。それは携帯からスマートフォンへの進展によって単なる電話機からPCに代わる情報端末へと進化しつつあるケータイを凌ぐ、クルマそのものの進化や価値観のパラダイムシフトをもたらすことになるかもしれない。すでにグランツーリスモのポリフォニーディジタルとのコラボレーションは明らかになっています。

   これまで知り得なかった新しいFRスポーツカーの世界が、あと半年後にもたらされるかもしれません。8年ぶりのオフィシャルブログ復帰ということでちょっと妙に力が入ってしまいました。でも、濃いめの話はしがらみのないここでするのがいいですね。この他にも、ツイッターやフェイスブック、carviewのスペシャルブログに加えてあといくつかのブログとメルマガを立ち上げるつもりでいます。

   自前のメディアで思う存分ジャーナリスティックに情報発信をする。すでにそれが十分可能な時代になっています。できるところまで突っ走ってみようと思うので、どうか皆さんサポートよろしくお願いします。期待するのは、ただひたすらアクセスして読んでもらうこと。異論反論はもちろん大歓迎です。

   蛇足ながら‥‥‥

   3.11東日本大震災は、間違いなくこれまでの私たちの生き方に疑問を呈し、これからの価値観に大きな変更を求める大きな転機となりそうです。被災地を巡って得た強烈て印象は、必ずや何らかの形でフィードバックしなければと思っています。

   まだ事態は始まったばかり。諦めることなく、より良き方向へと進んで行こう。再スタートにあたっての、現在ただいまの率直な気分であります。